ある春の日


「こんにちは!千夜さんの病棟で働きたくて希望したけど通りませんでした」


弾むような元気いっぱいの声で挨拶してくる初々しい新人


ケイはその年に入社した新人だった


彼女とは以前交流があって


その交流とは彼女の臨地実習・・・看護学生の実習の時であった


そう彼女は学生で私は指導者


私の様な人間でも人の前に立って背中を見せていたことがあったのだ


そのケイを数ヵ月後に

私が看取るとは思いもしなかった・・・





「うはぁ(笑)!元気いっぱいね!新しいこと大変だけど頑張れ!」


私の精一杯のエールに満面の笑み


その時の彼女は先輩ナースについて歩くのが精一杯で


多分廊下さえ自由に歩けなかったであろう


通りすがりで見つけた馴染みある私の顔を見て


思わず緊張が解けて声をかけてしまったという様子であった


数メートル先で配属病棟の先輩ナースが待っている


慌てて追いかけるケイ


私は先輩ナースに軽く会釈する・・・忙しいのに悪いねという意を込めて


先輩と言えど私から見れば後輩ナースも軽く会釈をする・・・いいえ全然という意を込めて






彼女と最初に会ったのは彼女が看護学校の3年生だった時で


卒業論文を書かなければならない様な時期


学生として一番頑張っている時期である


この頃の学生は寝る間も惜しんで勉強を重ね


そして実践の場である病棟実習に挑んでくる


中には緊張のあまり倒れたり吐いたり泣き出したり


色々なハプニングも起こる





「はい!こんにちは!今日から担当の千夜です


約束事は3つ


1.私に言っちゃいけない事は無い


2.できないことも無い


3.だけど真剣にやらないと患者様に失礼です


どんなことも守ってあげるから安心して実習しましょう


だけど真剣じゃなければ厳しくいきますよ!


・・・・・緊張は必要ありません


私は学生時代落ちこぼれだったし


実習点は最低でしたから皆さんの方が優秀なはずです(笑)」


緊張していた学生達5人は薄っすら笑った


薄っすらしか笑わなくても貧血で倒れるよりマシであった





そんな挨拶が幸したのか


学生達は色々な悩みを打ち明けてきた


「毎日受け持ち患者さんの所にいくのですけど・・・私は何をしてあげたらいいのかわからなくて」


そんな悩みを持ってきたのがケイであった


学生からのこういった悩みは珍しくない


「ケイは失恋したことあるの?」


「え?あ・・・はい」


「その時友達に打ち明けて救われなかったかい?」


「はい・・・友達って大切だなって思いました」


「家族には言えないでしょ?病気も一緒なんだよ・・・誰かに聞いてもらったり


居てもらうと楽になるの」


「はい・・・」


「患者さんは毎日来てくれるケイのこと待ってるよ


きっと楽しみにしてるよ」


「わかりました!」


ここからケイはどんどん変わり


他のメンバーにも良い影響を与えていく事となった







・・・つづく