私達は真っ白な雪山へ車を走らせた
真っ白な雪の中でシュプールを描いた
描いたと言っても私は子供の頃に何度か経験がある程度で
一つ一つの動作がモタモタしている
転んでも中々起き上がれなかったり
方向転換でアヒルの様に不恰好に足をバタつかせたり
ただ雪に恐怖心が無いため
思いっきり転んでは大笑いをしていた
それを見てカッツも大笑いしていた
カッツはというと
ものすごいスピードで滑り降りてくるのだけれど
筋力が続かなくなった頃に大転倒する
止る事を知らない男であった
そんな滑り方が好きらしく全身真っ白になって犬の様に喜んでいた
ランチを食べながらビールを飲んで
ゲレンデのイベントコーナーで焼いていた牛の丸焼きを食べ
カッツの気分は上々だった
私からのプレゼントを力いっぱい喜んでくれていた
遅めのランチを食べ
もう一滑りもすると
辺りはどんどん暗くなってきた
「あの!トイレ!滑ってていいよ?」
「ううん 休みながら待ってるよー」
トイレ休憩はおかしな事では無かったが
私は何となくドキドキしながら足早にカッツから離れる
そしてトイレを通り過ぎ駐車場まで重いスキーブーツで走り
ケーキを持ち帰ってロッカーに入れる
「はぁはぁ」
汗だくでカッツの待つ場所へ戻る
「走ってきたの?」
「うん 近いトイレ満員で」
おかしな子だと言いた気に笑いながら
私達はまた滑り出したが
そろそろゲレンデを出発しなければならない時間になった
「帰ろうかー」
「うん」
スキーを担いでどんどん歩き出すカッツ
「待って!・・・あのっ!あれだ・・・あの木の下で待ってて!」
私は大慌てでカッツを追い抜き
振り返っては待っててねと叫びながらケーキを取りに行った
何か素敵な台詞でも言って格好良くいこうと思ってたけれど
実際そんな余裕は私には全く無くて
いっそこのまま帰ってしまおうかとも思った
ケーキの箱を持って歩き難いスキーブーツでヒョコヒョコ不恰好に駆け寄る
イルミネーションされたピカピカ光る木の下でちゃんとカッツは待っていた
私は木の下に座り込み箱を開ける
そしてダボダボのウエアのズボンのポケットから
グラスを出して
ジャケットのポケットからワインを出した
「はぁはぁ・・・あの・・・お誕生日おめでとう(笑)あーーー恥かしい!ね?」
周りはホテルやラウンジに出入りする人々が行き交い
皆見ていた
私は恥かしくて格好悪くて
とにかく薄っすら泣きそうだった
「やっぱ・・・こんな所でケーキなんて食べられないよね(笑)?」
私は恥かしさのあまり早口で多弁になる
カッツはしゃがみ込んでローソクに火をつけると
立ち上がって大きな声で叫びだした
「みんな~今日はボクの誕生日なんだよ~!」
「冬だからってクリスマスじゃないんだよ~!ボクの誕生日!!」
周りの人は笑いながらも立ち止まり
おめでとうと口々に言ってくれた
そして「いいなぁ羨ましい」とか「かっこいい」とか
そんな言葉も聞こえて来た
その度にカッツは
「いいでしょう!」とか「羨ましいでしょう!」と嬉しそうに応えていた
私はとても恥かしかったのに
途端に恥かしくなくなって
はしゃいでるカッツを見て幸せに思った
そして一生忘れない思い出に
雪が降り始めると思い出す
多分カッツも天国で・・・
・・・つづく
