恐い・・・?から好き・・・?この人何を言ってるんだろう?
そこに呆然と立ったまま暫くの沈黙が流れ・・・
「ぶっ・・・」
私は噴出してしまった
私は何とも返事をしないまま帰ると告げ店を出た
彼はその後も何度も電話をしてきた
予定があるからと断ったり
電話で少し話をして切ったり・・・そんなことが続いた
実家に男の人から電話が来るのは困ったのだが
彼から告白を受けてから
何だかハッキリと断れなくなっていた
「恐いから好き」ってどういう感覚なんだろうと
興味をそそられた
そして何度かのやりとりの後
もう一度会ってみようと思うようになっていた
とても気になる存在になってはいた
何故気になるのかは私自身わかっていなかったが
それをハッキリさせたかった
「じゃあ食事でもしましょうか?」
待ち合わせたのは・・・全く思い出せないのだが
お酒の飲める多分居酒屋・・・やきとり屋だったのではないかと思う
22~23歳で働き出したばかり
私にとっては居酒屋でもかなり豪華なディナーだったし
時間を気にしないで長く居れるので
話し込んだりする時はよく利用していた
彼は素面の時よりアルコールが入った時の方が
のびやかに話している様に見えた
大抵の人間はそうなのだが
喫茶店で話していた時はとてもおどおど話していた印象があったし
初めて会った時には先輩と一緒だったせいか
自由に話していない様な印象があったから
今目の前ののびやかな彼がとても強調されていた
私は彼と話しながらそこに映る自分を探し
何故こんなに気になるのか
自分の分析を始める
彼の話は
面白く話しているのだけれど
どこか切なさを感じた
『これだ・・・』
私は彼に
同じ場所を見つけた
寂しくて仕方ないのである
彼は寂しい故におどけたり目立ったり・・・時にグレたりして
周囲の関心を自分に集めようとしてきたのである
表現方法は違うが
私も寂しい気持ちを堪えるために
まるで感情に起伏が無いかのように
無表情で凍りついた様に振舞っていたのであった
彼はそんな自分自身を理解してくれるのは
私なのだろうと
理屈ではない何かで読み取っていた
『私はお母さんじゃないから・・・よしよしと撫でてはあげられないし・・・』
私は私を抱きしめ包んでくれる大きな強い男が現れるのを待っていた(と思う)
大抵の女性はそんな王子様を待つのであろう
『君が寂しいからといって癒してあげられるほど・・・自分に余裕が無いのよ・・・』
そう自分に言い聞かせながらも
自分が捨て猫なのに更に捨て猫を拾ってしまった気分に陥る
私はもう後に引き返せないくらい
彼の悲しい感情の中に居た
そんな事に気づかず
彼はやっとデートができたと
屈託無く笑って楽しそうにおどけていた
彼は誰かに自分と真剣に向き合って叱って欲しかったのだ
それで「恐い私」を択んだ
後になってそれが痛いほどわかった
・・・つづく
