「会って話をしたいんだけど お茶でも飲みませんか?」


私は彼に会うべきと判断した


そして指定された喫茶店へと向かった


もう二度と電話をしてこない様にと告げるために






店に着くと彼はもういる様で


店主に待ち合わせなら2階に上がれと説明される


私は黙ったまま軽く会釈をして階段を上った


24時間営業のその喫茶店は


閑古鳥が鳴いてガランとしていた


彼はコーヒーを飲んでいてカップには殆ど残っていなかった


灰皿には沢山の吸殻があり時間の経過を伺えた


「こんばんは」


「こんばんは・・・急に呼び出してごめんね」


「近くから電話したのでしょうか?随分待ったみたいだけど」


「そうなんだ」


彼は苦笑しながら話し始める


先日帰宅してからすぐに高校時代の友人宅へ


卒業アルバムを見に出向いたこと


だけどカラカワレてアルバムを見せて貰えなかった事


何回か頼んで結局ご飯をおごり見せてもらったこと


そして今日その同級生に背中を押され


一緒に会いにきたこと


実家に押しかけようとする友人を追い返して


この喫茶店で連絡して待っていたこと・・・・・




話してる間彼は私を見ることも無く


もじもじとコーヒーカップをいじっていた


その合間にどんどんと吸殻が増えていく


高校生の時彼は学年で・・・いや学校中で知らない人が居ないくらい目立つ存在であった


『何か人と違った事をして目立っていないと気が済まない』そんな印象さえ受けた


私と彼は同じクラスになることもなく


当然話したことも一度もなかった


仲間もテリトリーも全く違う人種だったので話して見ようとも思わなかった


お互いそうであったろう


その目立つスター(?)・・・ちょっと違うな


スキャンダラスな・・・違う・・・常に注目の人だった彼が


今私の目の前でもじもじと下を俯いている・・・


それは私の中の彼とは全く違う顔だった


「あのぅ・・・誰かと間違ってません?私高校生の時は一度もお話したことないし


しかも残念ながら覚えててもらう程美人でもないし


今もわざわざ連絡先調べて追いかける程の人間でもないでしょう?(笑)」


「いや・・・今日ツレにも言ってたんだけど


とても変わってて本当に衝撃を受けました


しかも話したこと無いけどやっぱり高校の時の千夜さん覚えてるし


この前会って話してからずっと気になって忘れられなくて」


私の高校生時代といえば


部活動もせずにお金も無いので友達と遊びに行くのもままならず


ショッピングに出掛けるということも殆ど無い地味な学生であった


ただ『悪いことはサラリクールにカッコヨクする』がモットーだったので


まじめな顔をして各教科単位ギリギリしか出席していなかった(笑)


三流進学校であったため単位さえ取っていれば内申を悪く評価されないことはわかっていたからだ


グレたり粋がって目立った行動をする人たちを横目に


内心『子供ね』と馬鹿にしながら家に帰ったり海を見にいったり


好き勝手な事をしていたものだ




昔話も混ぜ3時間近く話し込んだのだろうか


互いのコーヒーも冷め夜もすっかり更けた


私は彼に全く興味を持たず電話が来るまで忘れていたと話し


それとなくもう電話をして欲しくない意思を表した


彼の友人もガラが悪かったし関わりたくないというのが本音だった


彼は察したようで下を俯き黙った


気まずい沈黙の中・・・もう帰ろうと立ち上がる私




「あの・・・あの夜君に『本当は誰かに認めてもらいたかったのでしょう?』って


『引き止めて欲しかったのでしょう?』って言われた時


とても衝撃を受けて忘れられなかったの!」


「え?・・・・・ああ・・・ごめんなさい傷つくこと言っちゃったのね」





「千夜さんのその静かな恐さが好きです!付き合ってもらえませんか?」


私はぎょっとした


恐い・・・?から好き・・・?この人何を言ってるんだろう?


そこに呆然と立ったまま暫くの沈黙が流れ・・・


「ぶっ・・・」


私は噴出してしまった






・・・つづく