例えば、彼と喧嘩した時。
私が理不尽に機嫌が悪くなったりして、八つ当たりして、向こうの機嫌も悪くなり、しまいには怒ってしまうとする。
私は、自分の非に気づいて謝り、なぜぞんな態度を取ってしまったのかを説明する。
それでも彼の怒りは収まらない。口調は堅く、私と話したくないと思っているのがありありと感じられる。
私はもう一度謝るけれど、彼は、その問題についてはもう話したくない、と言う。
夜、ベッドへ入ると、彼は私に背を向けてしまう。
すでに謝ったのだし、その理由も説明した。それなのに、彼は私に対してまだ怒っている。彼は私を許してくれていない。あんな態度を取った私は、失望されて当然なのだ、と思い私は絶望的な気分になる。
背を向けている彼の姿は、私には、彼が全身で私の存在を拒絶しているようにしか思えない。私は、受け入れられず、拒否されていると感じる。
彼は私に触れたくもないのだ。私はもう、彼に必要とされてはいないのだ。
そして、私は泣き出してしまう。
この時、私の中ではちいさな女の子が怯えて泣きながら懇願している。
「私を見捨てないで。私を受け入れて。拒絶しないで」
「お願いだから私を抱きしめて。どこへも行かないと約束して」 と。
彼女にとって、受け入れてもらえない自分、求められていない自分は何者でもない。何の価値もない存在なのだ。そう感じるとき、彼女は足元にぽっかりと開いた暗闇に飲み込まれ、塵のように消えてしまう気がする。
また、ある時は。
彼に電話をかけると、いつもは優しく甘い口調の彼が、どこか素っ気ないような、堅い口調で応える。そんなことは初めてで、私はひどく戸惑う。
何か彼の気に障ることをしたのだろうか、と必死に考えをめぐらせる。
もしかしたら、メールを返していなかったから?
理由は思い当たらないが、自分のせいで機嫌が悪いに違いない、と思い不安になる。
彼は、「忙しいのでもう切らなきゃ。また後でかけ直す」 と言い電話を切る。
私はとてつもない不安に襲われ、どうして良いのかわからなくなる。
私は、拒絶されている、彼は私から離れて行ってしまっている、と感じる。
そしてまた、私の中のちいさな女の子が泣き出す。
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こういった不安の発作に襲われることがよくあった。
今も、ごくたまにある。
私の悪いクセだ。
例えば喧嘩をしたとき、彼が私をシャットアウトするのは、自分の気持ち(怒り)を彼なりのやり方で処理しようとしているからに過ぎない。
問題についてそれ以上話したがらないのは、話さないことで「終わったこと」「過ぎたこと」として処理しようと努力しているからで、彼は私の存在を拒絶しているのでもなければ、私をもう愛していないからでもない。
電話で彼の口調がいつもと違うのは、単に疲れているか、彼自身の(私とは全く関係のないところで)問題を抱えているか、あるいは男友達が周囲にいるので恥ずかしいのかもしれない。
これらは、男性の心理を学んで初めて判ったことで、頭では理解しているのだが、たまに彼の怒りに遭遇すると、そう心が感じてしまうことを止められない。存在自体を拒絶されたような気分になり、原因は自分にあると思いこんでしまう。
彼の態度が硬化するとすぐに「拒絶されている」 「求められていない」という恐怖や不安を感じてしまうのは、私の長年蓄積した『見捨てられ不安』から来ている。
これは年季が入っているので、一朝一夕で消えるものではないのだ。
相手の心理や、男性と女性の問題の処理のしかたの違いについて学んでから、頭では冷静に対処できるようになった。
でも、やはり『心』が反応してしまうことを完全にストップすることは、そう簡単ではない。
でも、こうした恐怖や不安に『反応』してしまうとき、理性で私のなかのちいさな女の子に語りかけてあげることはできる。
「彼は彼のやり方で物事に対処しているだけで、あなたを拒絶しているのではないんだよ。彼は、怒っていても、いつもの態度ではなくても、あなたを変わらず愛しているし、あなたを必要としているんだよ」 と。
そして、少しずつ、心の筋肉を鍛えていけば良いのだ。
そうして、いつかきっと、彼が抱きしめられないときは、私が彼女を抱きしめてあげられるようになる、と思うのだ。
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