子供の頃、10代の頃は、ひとりでいることがあんなに心地よかったのに、いつの頃からか、二人でいることのほうが心地よくなってしまった。
よく独りきりで美術館に行ったり、映画を観たり、日が暮れるまで喫茶店で物を書いたり本を読んで過ごした。それが楽しくてしかたなかったのに。
今では、以前のように独りを心から楽しめなくなってしまった。
今や私の心の帰る場所になってしまった人が手の届くところにいない、同じ空の色を眺めて一緒に微笑むことのできない世界で、独りで何かするということを私は、息を殺して水中を泳ぐような気持ちでやり過ごしている。
それでも、暗闇に沈む夜の通りを自転車で走り抜けながら、生ぬるい風にぶわりと舞い上がる草と土の匂いを嗅いでいると、独りが私の居場所だったころを思いだす。
失うものがひとつもなかった、傍若無人な私を。
自分より大切なものの存在など知らないくせに、知っていると思っていた物知り顔の私を。
尾ひれをはためかせてすいすいと泳いでいたあの頃の私を。
このまま闇のなかへ突き進んでいって、このままどこまでも行ける、と思う、あの途方もなくやすらぎに満ちた気持ちを。
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