タケミナカタ ほかの説話における諏訪の祭神 蝦蟇神退治

 


『上社物忌令』と『陬波私注』には諏訪明神が天下を悩ませる蝦蟆神(がまがみ)を退治する話が元旦に行われる蛙狩神事(かわずがりしんじ)の起源譚として語られている。

 




正月一日の蝦蟆狩之事


蝦蟆神成大荒神、乱悩天下時、大明神彼ヲ退治御座し時、四海静謐之間、陬波ト云字ヲ波陬(なみしづか)なりと読り、口伝多し。望人ハ尋へし、于今年々災を除玉ふ、謂ニ蟇狩是ナリ。(『上社物忌令』(神長本)より)



【訳】蝦蟆(蛙)神が大荒神と成って、天下を乱し悩ませた時、(諏訪)大明神がこれを退治してそこにお座りになった。それによって四海静謐(天下泰平)となったので、だから陬波(すわ)と書いてナミシズカナリと読むのだ、という言い伝えが多くある。(蛙狩りを)見た人は(きっとこの神事の意味を)尋ねるだろう。(それは)昔から今に到るまで毎年々の災を除く。それがこの蛙狩りである。

 





更に明神が退治した蝦蟆神を竜宮城に通ずる穴に閉じ込め、石でふたをし、その上に座した、ともいわれている。



この話については、蛇神としてのタケミナカタと土地神(ミシャグジもしくは洩矢神)による神権争奪を意味するという説や、陬波大王の悪龍退治の同系異伝もしくは変奏とみる説、あるいは諏訪明神と同定される降三世明王宇賀神三毒退治を表すという説などがあげられている。