菟道稚郎子 記録 万葉集

 

 

 

『万葉集』には、挽歌(ばんか)として次の歌が見える。

 

“ 挽歌 宇治若郎子宮所歌一首

  妹らがり 今木の嶺に 茂り立つ 嬬松の木は 古人見けむ

 いもらがり いまきのみねに しげりたつ つままつのきは ふるひとみけむ ” 

 

—柿本朝臣人麻呂之歌集出、『万葉集』巻9 1795番

 

 

このうち第5句の「古人」とは「故人」、すなわち菟道稚郎子を指すとされる。

 

 

 

 

※挽歌(ばんか)

 

死者をいたむ詩歌。輓歌とも書く。中国では葬送の際,棺を載せた車を引 () く者が歌った。『万葉集』では雑歌(ざっか)、相聞歌(そうもんか)とともに三大部立の一つで葬送だけでなく広く人間の死に関する歌が収められている。