高野神社(津山市二宮) 境内 宇那提森
宇那提森(うなでのもり、うなでがもり)は、当社鎮座地の森。『五代集歌枕』や『八雲御抄』(やくもみしょう)で美作国の歌枕として記載されている。
『万葉集』には「卯名手(うなて)の社」の記載があり、これは大和国高市郡(たかいちぐん)雲梯郷(うなてごう。現 奈良県橿原市)にあてるのが通説だが、後世の歌学書はこの「うなてのもり」を用水の神の普通名詞として美作国にあてている。また、美作国の「うなての社」で雨乞いをする様子を記す文献もあり、水にまつわる神としての当社の信仰がうかがわれる。
伝承によると、この森には大蛇が棲んでおり、人畜に害をもたらし神社の扁額を舐めまわしたと言われる。当社所蔵文化財のうち藤原行成(ふじわらの ゆきなり/こうぜい)筆と伝える扁額「正一位高野大明神」が残っている。大蛇は森で殺されたといい、現在も残る蛇塚・胴塚に埋められたという。
宇那提森は戦国時代に砦構築のため宇喜多氏により伐採され、現在は石鳥居付近に一本のムクノキのみが残され市の天然記念物に指定されている。