クシナダヒメ なぜ櫛にされたのか ②

 

対オロチ用の武器になった説



古代人の思想で、女性は生命力の源泉と考えられていた。スサノオがクシナダヒメを櫛に変えた理由は、ヤマタノオロチに対抗するためにクシナダヒメ本人を身に着けることで女性の有する生命力を得ようとしたためと考えられる。



戦いの場に持っていくのであれば、櫛よりもなど武器の類に変えたら一層有利であったと考えられるのに、スサノオは櫛を選択している。それは女性の有する生命力だけでなく、櫛の持つ呪力も同時に得ようとしたためである。日本では古来、櫛は呪力を持っているとされており、同じ『古事記』においてイザナギは、妻のイザナミが差し向けた追っ手から逃れるために、櫛の歯を後ろに投げ捨てたところ、櫛がに変わり難を逃れている。また、櫛は生命力の横溢するを素材として作られていたため、魔的存在に対する際に極めて有効な働きを為すものと考えられたと思われる。



クシナダヒメの変身した櫛は、櫛の本来有する呪力にクシナダヒメの持つ女性としての生命力を合わせ持ち、さらに身体の材質まで竹に変化していたとするならば、竹の材質自体が持つ生命力も合わせ持つことになり、魔的存在たるヤマタノオロチに対し、強力な武器の一つであると考えられたに違いない。