隠津島神社(二本松市) 祭祀 木幡の幡祭り ③

 


羽山神社に着いたゴンダチ一行は、まず神社直下の「くぐり岩」と呼ばれる70センチ程の割れ目のある大岩でゴンダチの「胎内くぐり」を行う。ゴンダチは岩の前に太刀と袈裟を置いて納め、小銭(「お賽銭」と呼ぶ)を口に咥えて1人宛割れ目を身を捩りながら潜り抜け、抜け出ると咥えていた小銭を一旦地面に落として手で拾う。ゴンダチ全員が潜り終えるとくぐり岩の前に並び立ち「ゴンダチ呼ばり」となる。これはくぐり岩の上と下に立った先達が法螺貝を吹きつつ大声でゴンダチと問答を行い、最後にゴンダチが「八幡太郎と申す」と述べる儀式で、最後のゴンダチの言上を聞いた周囲の者は「生まっちゃ」と声を掛けてこれを祝福する。その後ゴンダチは羽山神社本殿に向かい、社前の乳屋で先の「お賽銭」で「乳(ちち)」と呼ぶ小豆粥を購ってこれを食し(「食い初め」と呼ぶ)、その後持参した梵天と丸餅を神前に供え、幡組と合流して一緒に拝礼する。その後再度ゴンダチだけで拝礼を行うが、その作法は最初に社殿に背を向けて拝む「背拝み」、次いで横向きに拝む「横拝み」、最後に神社正面から拝む。ゴンダチは以上を果たす事で成人として認められる事となるが、かつては3年がかりの儀式で、初年は背拝み、次年は横拝み、3年目に初めて正面から拝む事で成人と見なされたという。



羽山神社の参拝を終えた一行は下山途中に本社に参拝し、その後各堂社に戻り直会(なおらい)となる。また、祭典後に幡用に集めた布は持ち主へと返却するが、それで縫った着物を子供に着せると無病息災に育つという。