王子神 王子信仰

 


日本には古来、本宮と呼ばれる神社の主神からその子供の神として分かれ出た神格を祀ったり、巫女(みこ)的な性格をもつ母神とその子神をあわせて祀る信仰があり、これを若宮(わかみや)あるいは御子神(みこがみ)と呼んでいた。のちに仏教神道習合が進むと、仏教の神格のひとつで、図像では仏に顧従する児童の姿で表現される「童子(どうじ)が若宮と習合され、王子と呼ばれた。また、王子をまつる社(やしろ)も王子と呼ばれることがある。



このような習合が顕著だったのは熊野権現信仰においてであり、平安時代の末期に熊野十二所権現のうちの五柱である五所王子(ごしょおうじ)と呼ばれる神々が信仰されるようになった。そのひとつである若王子(にゃくおうじ)あるいは若一王子(にゃくいちおうじ)は少年あるいは少女の姿であらわされる神で、全国の熊野信仰において熊野権現を勧請する際に、多くの場合この神が祀られた。



また同じ時期には、祇園社牛頭天王(ごずてんのう)日吉大社(ひよしたいしゃ)山王権現(さんのうごんげん)の眷属神として、王子の姿をした八柱の神格である八王子権現(はちおうじごんげん)があらわれ、病気を払う力をもった霊威あらたかな神として広く信仰された。