保食神 解説

 


この説話は食物起源神話であり、東南アジアを中心に世界各地に見られるハイヌウェレ神話型の説話である。『古事記』では同様の説話がスサノオオオゲツヒメの話となっている。よって、保食神はオオゲツヒメと同一神とされることもある。また、同じ食物神である宇迦之御魂(ウカノミタマ)とも同一視され、宇迦之御魂神に代わって稲荷神社(いなりじんじゃ、とうかじんじゃ)に祀られていることもある。



神名のウケは豊受大神の「ウケ」、宇迦之御魂神の「ウカ」と同源で、食物の意味である。



食物神というだけでなく、「頭から牛馬が生まれた」ということからの神ともされる。東日本に多い駒形神社(こまがたじんじゃ)では、馬の神として保食神が祀られており、さらに「頭から馬」ということで馬頭観音とも同一視されている。



食物とそれが生じた体の各部との関係は、朝鮮語に訳すことで説明がつく、とする説がある。一方の古事記にあるオオゲツヒメの説話ではこのような対応関係が見られない。このことから、日本書紀の編者に朝鮮語を解するものがいて、生成物と体部を結びつけたと考える説である(『日本書紀(一)』59頁、61頁)。ただし、現代の朝鮮語と古代の朝鮮半島で使用されていた言語は別である。