菊理媛神 神話上の菊理媛 ①
日本神話においては、『古事記』や『日本書紀』本文には登場せず、『日本書紀』の一書(あるふみ)に一度だけ出てくるのみである。
【原文】
及其与妹相闘於泉平坂也、伊奘諾尊曰、始為族悲、及思哀者、是吾之怯矣。
時泉守道者白云、有言矣。曰、吾与汝已生国矣。奈何更求生乎。吾則当留此国、不可共去。
是時、菊理媛神亦有白事。伊奘諾尊聞而善之。乃散去矣。
【解釈文】
その妻(=伊弉冉尊)と泉平坂(よもつひらさか)で相争うとき、伊奘諾尊が言われるのに、「私が始め悲しみ慕ったのは、私が弱かったからだ」と。
このとき泉守道者(よもつちもりびと)が申し上げていうのに、「伊弉冉尊からのお言葉があります。『私はあなたと、すでに国を生みました。なぜにこの上、生むことを求めるのでしょうか。私はこの国に留まりますので、ご一緒には還れません』とおっしゃっております」と。
このとき菊理媛神が、申し上げられることがあった。伊奘諾尊はこれをお聞きになり、ほめられた。そして、その場を去られた。