日光東照宮 陽明門 

 


組物の四手先目の木鼻は彩色の唐獅子となり、その左右には牡丹を表す。初層の内部天井は中央間(通路部分)が2面の墨絵の雲竜図となり、その周囲には彩色の雲文がある。両脇間の天井は、東が天女図2面、西が迦陵頻伽(かりょうびんが)図2面をいずれも彩色で描く。初層両側面の外壁には金箔の地に彩色の牡丹立木の彫物があるが、これは当初のものではなく、寛延2年(1749年)から宝暦3年(1753年)にかけての修理時に制作されたものである。



昭和49年(1974年)の修理時に、現在の牡丹図の下から、唐油彩色の鶴錦花鳥図(つるきんかちょうず)が発見された。唐油とは、桐油、荏油(じんゆ。エゴマ油)などを顔料の溶剤とした絵画技法である。



上層は円柱を頭貫でつなぎ、その上に台輪を乗せる。柱、貫、台輪等は初層と同様の胡粉塗とし、柱には松皮菱の地紋彫がある。頭貫の木鼻は竜馬(りゅうば)となる。竜馬は一見、竜と似ているが、前脚に馬のような蹄があることから区別できる。



頭貫は浪間に竜馬の地紋彫を施し、正面及び背面の中央には大型の蟠竜(ばんりゅう)の彫物がある。上層の柱間装置は、正背面の中央間を黒漆塗の桟唐戸とし、正背面の両脇間および東面・西面はそれぞれ変形の花頭窓とし、鳳凰円文で飾る。中央間の桟唐戸の前にも変形花頭窓形の枠がある。桟唐戸の左右には胡粉塗の昇り竜降り竜の彫物があり、正背面の両脇間および東面・西面の花頭窓の左右には胡粉塗の松竹の彫物がある。



上層の周囲には高欄をめぐらす。高欄の四隅の柱は逆蓮の柱頭を用いた禅宗様である。この高欄の羽目板には、唐子や植物、鳥などの彩色彫刻がある(後述)。上層の組物の仕上げは初層と同様で、斗や肘木を黒漆塗とし、稜線部に金箔を押し、牡丹唐草文の沈金彫を施す。出桁は群青地の上に牡丹唐草に鳳凰文を描く。組物間の空間(琵琶板)には鳳凰の彩色彫刻がある。上層の組物には尾垂木(おだるき)が上下2段に入り、上段の尾垂木先は、下段の尾垂木先は竜と似るが、異なった動物である「息」(読み方は「そく」または「いき」)とされている。



四隅では尾垂木が3段になり、上段から順に竜、雲形、息となる。「息」という架空の動物の名は、宝暦3年(1753年)にまとめられた『御宮並脇堂社結構書』(『宝暦結構書』)という資料に出てくる。この資料は東照宮内の建築装飾の主題や技法について詳細に記録した書物である。「息」という動物名はこの資料にしか見出せず、「息」の作例も日光東照宮の陽明門と拝殿以外の場所にはほとんど見出せないことから、その正体は謎であり、読み方も「そく」か「いき」か不明のままである。「息」は外見上、竜とよく似ているが、角が1本であること、鼻が豚に似ていることなど、明らかに異なった図像的特色もある。