スサノオ 解説 ②
『記紀』神話においては出雲の神の祖神として書かれているスサノヲであるが、『出雲国風土記』では彼はあまり登場せず、意宇郡(おうぐん)安来郷や飯石郡(いいしのこおり)須佐郷などの地名制定や御子神(みこがみ)たちの説話が書かれており、八岐大蛇退治の説話は記載されていない。そのため元々は別の地方の神ではないかとする説もあり、その地として、以下のような説がある。
· 『日本書紀』の一書で八岐大蛇退治が行われたとする備中とする説
· 大国主がスサノヲのいる根の国へ行く前に「木の国」へ行っていること、子の五十猛が祀られているとしていることなどから紀伊国(熊野)とする説
· 『日本書紀』一書第4のまず新羅の曽尸茂梨に天降ってから出雲の鳥上峯に来たとの記述から、新羅の神とする説
しかし、基本的には『記紀』、風土記をそれぞれ眺めると出雲との結びつきが強い神といえる。出雲国(現:島根県)東部の奥出雲町(おくいずもちょう)にはスサノヲが降臨したといわれる鳥髪峰(現:船通山)、それに隣接する安来市(やすぎし)は彼が地名をつけたという風土記の記述もある。また、前述の通り八岐大蛇退治は産鉄民の平定を象徴すると見る説があるが、これらの地域はアマテラスへの献上の草那芸の大刀(くさなぎのたち)、大国主命への譲渡した生大刀など日本刀の源流とされる神話があり、古代よりたたら製鉄が盛んだった流れから、現在でも島根県安来市には高級特殊鋼で有名な日立金属安来工場や冶金研究所などが日本刀剣美術協会とともにこの地域で古式にのっとったたたら製鋼を行うことでも有名である。