イザナミ 墓所
イザナミの墓所の伝承地は、日本神話に記される比婆山や熊野市有馬のほか、雲伯(うんぱく)国境を中心として日本各地にある。宮内省は八雲村(やくもむら。現 松江市)の神納山を比定地の中で最も有力として「陵墓参考地」に認定し、内務省は船通山(せんつうざん)の北にある御墓山を「伊弉冉尊御陵流伝地」に指定していた。
しかし、近世以降、古事記解読に初めて成功した本居宣長の古事記伝の話と、鉄製品を作る最良の砂鉄の産地は雲伯国境地帯であることから、島根県安来市伯太町のもの(比婆山久米神社。ひばやまくめじんじゃ)が支持されていた歴史があり、江戸時代、母里藩の古地図にも峯山大権現と記されているのが確認されている。
さらには当地に伝承されてきた、たたら製鉄でつくり出される玉鋼は日本人の魂の象徴とされる日本刀の創始(安綱)ともかかわりが深く、最近では安本美典(やすもと びてん)がこれら諸説を文献学的に比較し、島根/鳥取県境に最も近い安来のものを比定している。