事代主 鶏伝説
島根県 美保関町(みほのせきちょう)には、事代主が鶏を嫌うという言い伝えがある。折口信夫は、その理由として、事代主の妻訪い(妻問い)の物語を紹介している。それによると、「事代主は、夜毎海を渡って対岸の揖夜(イフヤ)の里の美保津姫(みほつひめ。三穂津姫)のもとへ通っていたが、鶏が間違って真夜中に鳴いたため、事代主はうろたえて小船に乗ったものの、櫂(かい)を岸に置き忘れて仕方なく手でかいたところ、鰐(わに。サメのこと)に手を噛まれた。以来、事代主は鶏を憎むようになり、それにあやかって美保関では鶏を飼わず、参詣人にも卵を食べることを戒める」としている。島崎藤村は、「釣り好きの事代主が寝ぼけて鳴いた鶏の声を聞いて未明に船を出し、荒れた海で艪(ろ)も櫂も失い、足で水をかいたところ鰐に足を噛まれた」という話を紹介している。現代でも、事代主を再現した美保関の青柴垣神事の際に当屋に指名された者は、1年間鶏肉を食べないで身を清める習わしがあり、美保関から中海(なかうみ、なかのうみ)を渡った対岸には、美保津姫を祀った揖夜神社(いやじんじゃ)がある。