織幡神社 伝承
織幡神社の鎮座する鐘ノ岬(かねのみさき)では、異国の釣鐘が海に沈んでいるとする伝説(沈鐘(ちんしょう)伝説)が知られる。「鐘ノ岬」の地名はこれに由来し、同様の沈鐘伝説は全国各地で知られるが、当地と福井県の金ヶ崎は特に有名である。ただし、鐘ノ岬の海底で釣鐘と見られていたものは大正8年(1919年)に陸に引き揚げられたが、この時に引き揚げられたものは釣鐘ではなく巨石であった。この巨石は、現在は織幡神社参道に安置されている。
また、この鐘ノ岬と対岸の地島の間は暗礁地帯で、古くから海上交通上の要衝・難所であったことが知られる。『万葉集』では、
“ ちはやぶる 金の岬を過ぎぬとも 我れは忘れじ 志賀の皇神(すめかみ) ”
—『万葉集』巻7 1230番
として、鐘ノ岬(金の岬)を通過する際には海の神に祈る様が歌われている。この歌をもって、鐘ノ岬にはかつて志賀神を奉斎する阿曇族が居住したとする説もある。