摩氣神社 祭祀組織 宮座(みやざ)

 


氏子各集落(村)では「株(かぶ)」と呼ばれる同族団中の有力な「苗(びょう)」(姓(せい)。名字)によって構成される「宮衆(みやしゅ)」等と呼ばれる宮座(みやざ)が組織され、祭事に参加してそれぞれの神役(所役)を勤める。宮本である竹井の場合、旧摩気村の特定の6家それぞれから1名の宮主(みやしゅ)が選ばれる(任期6年)。それ以外の旧篠田、今井、辻田からは特定の8家が宮司当(くじゅうとう、くにゅうとう)に就いて、神事等において宮司を補佐する。



これら各集落の宮座は摩氣神社の祭祀に当たると同時に、それぞれの村氏神の祭祀にも関与しており、そこには村氏神の祭祀と総氏神である摩氣神社の祭祀という重層構造が認められる。このような祭祀の重層構造は丹波地方に広く認められるが、範囲の広さと神事における古態の遺存状況から、摩氣神社の祭祀はその典型と見なすことができる。

 

 



祭祀の重層構造


例えば下新江村の場合、岡苗他7株の同族集団があり、その中の5苗が当屋制で宮衆を構成、神幸祭に奉仕すると同時に村氏神である蛭子(ひるこ)神社の祭祀を担うが、そこに更に祖神を祀る株の祭祀が重なる。本家が中世の地侍の裔と伝える岡株だと、本家の屋敷の裏手に「モリサンの水」と称する湧水と「地主(じしゅ)大権現」と称する小祠を株の神として祀るが、これが本来の「氏神」である。同様に他の株も「モリサン」や「地神(じがみ)」、「山ノ神」等と称する株の神(多くは大木)を株単位で祀り、他株と共に宮衆を組織しては蛭子神社と摩氣神社の祭祀に関与する事となる。このように「十一ヶ村」の各集落では「氏神」「村氏神」「総氏神」という三層の祭祀が重なっている事になる。同様に宮本である竹井においては、総氏神である摩氣神社が村氏神ともされるのであるが、祭祀は「村氏神」のものと「総氏神」のものとに分かれる三重の構造となっている。