日本の獅子舞 風流系の獅子舞
風流系の獅子舞は関東・東北地方に主に分布している。1人が1匹を担当し、それぞれが腹にくくりつけられた太鼓を打ちながら舞う。東北の一部には7~8頭で1組の鹿踊(ししおどり、しかおどり)もあるが、もっとも多いのは3匹1組の三匹獅子舞(さんびきししまい)であり、東京・埼玉などのかつて武蔵国と呼ばれた地域の農山村では一般的な郷土芸能・民俗芸能となっている。3匹のうちの1匹は女獅子(雌獅子)と呼ばれ、雄獅子が雌獅子を奪い合う女獅子隠しという演目を持つところが多い。伴奏は、篠笛と竹でできたささらという楽器である。「ささら」をする人は舞庭の四方に配置され、この楽器を奏する。「ささら」を欠く三匹獅子舞もある。起源は西日本の太鼓踊りあるいは陣役踊りといわれ、中心にいる数人が頭上のかぶり物を獅子頭に変えたものが始まりだろうという説が優勢であるが、東国の風流系の獅子舞はもっと古くからある日本古来の獅子舞であり、獅子頭(ししがしら)も本来は鹿や猪を模したものであったという説も根強い。獅子頭は通常木製(桐製)であり、獅子以外に竜頭のものや鹿頭のものもある。
言い伝え
風流系獅子舞の源流とされる甘楽町(かんらまち)秋畑(あきはた)の伝承では、「獅子はインドで人を食べて生きていたが、インドに人間が少なくなってきたので大和の国に行こうとしたところ、それを察知した日本の神が狐を天竺の権田河原に遣わし、獅子に『大和では人を食べる代わりに悪魔を退治すれば食べ物を与えられ、悪魔祓いの神としてあがめられるだろう』と諭し、狐が先導役になって日本にやってきた」とされる。演じられる際に、狐役が獅子舞を先導することから、この系統の獅子舞は稲荷流(いなりりゅう)と呼ばれるようになった。