天邪鬼 説話
民間の説話においては前述のように、人の心を察して口真似などで人をからかう妖怪とされるが、地方により伝承が異なる。
秋田県平鹿郡(ひらかぐん)、茨城県稲敷郡(いなしきぐん)、群馬県邑楽郡(おうらぐん)、静岡県田方郡(たがたぐん)などでは、人の声を真似ることから木霊(こだま)や山彦(やまびこ)が「アマノジャク」と呼ばれ、山中の声の反響はアマノジャクが声を真似しているなどという。栃木県芳賀郡(はがぐん)、富山県西砺波郡(にしとなみぐん。現・高岡市)、岐阜県加茂郡では山姥を指して天邪鬼と呼ぶ。
神奈川県箱根や静岡県伊豆では、天邪鬼は巨人のようなものとして伝えられており、かつて天邪鬼が富士山を崩そうとして失敗し、そのときに運び出した土がこぼれてできたのが伊豆大島だという。岡山県久米郡中央町(現・美咲町)では、天邪鬼が二上山(ふたかみさん)を高くしようとして石を積み上げたが、完成間近で夜が明けたために失敗し、兵庫県多可郡では天邪鬼が山々の間に橋を造ろうとしたが、同様に失敗したといい、これらの地方では山の上に自然石が転がっている場所や、製作者のわからない石垣などは天邪鬼によるものとされている。
岩手県九戸郡(くのへぐん)では天邪鬼が炉の灰の中にいるといい、東北地方では天邪鬼は蛹(さなぎ)のこと、秋田県仙北郡(せんぼくぐん)角館(かくのだて)ではチャタテムシのこととされる。また、同県の平鹿郡(ひらかぐん。現・横手市)での俗信では、嬰児はアマノジャクが子守をして泣かせないと言われていた。
『うりこ姫』など、昔話(日本の童話)にも登場する。
長野県南佐久郡(みなみさくぐん)の小海の奥の「カッポウ」という所に天邪鬼がいた。大きな体をしており、一気に一山越えて手桶をついたので、その跡がある。また付近には天邪鬼の足跡も残っている。