蘭奢待 由来と歴史
東南アジアで産出される沈香(じんこう)と呼ばれる高級香木。日本には聖武天皇の代(724年–749年)に中国から渡来したと伝わるが、実際の渡来は10世紀以降とする説が有力である。一説には『日本書紀』や聖徳太子伝暦の推古天皇3年(595年)記述という説もある。
奈良市の正倉院の中倉薬物棚に納められており、これまで足利義満、足利義教、足利義政、土岐頼武(とき よりたけ)、織田信長、明治天皇らが切り取っている。
2006年(平成18年)1月に大阪大学の米田該典(よねだかいすけ。准教授、薬史学)の調査により、合わせて38か所の切り取り跡があることが判明している。切り口の濃淡から、切り取られた時代にかなりの幅があり、同じ場所から切り取られることもあるため、これまで50回以上は切り取られたと推定され、前記の権力者以外にも採取された現地の人や日本への移送時に手にした人たち、管理していた東大寺の関係者などによって切り取られたものと推測される。