道鏡事件 解釈
日本の皇室は、歴史の中で幾度も危機を迎えたが、一般に僧・弓削道鏡によるとされるこの皇位継承の企みは、その中でも衝撃的な事件であった。この事件については『続日本紀』に詳細が書かれ、道鏡の政治的陰謀を阻止した和気清麻呂が「忠臣の鑑」として戦前の歴史教育においてしばしば取り上げられてきたが、既に江戸時代に本居宣長によって一連の神話的な事件の流れに懐疑的な説が唱えられ、近年には『続日本紀』の記事には光仁天皇の即位を正当化するための作為が含まれている(神託には皇位継承については触れられていない)とする説も存在する。