世界の雨乞い
イスラーム世界には「イスティスカー」と呼ばれる降雨祈願があり、マムルーク朝時代のエジプトでは増水祈願と呼ばれる大規模な雨乞いが行われていた。
南方熊楠(みなかた くまぐす)によれば、モンゴルに鮓荅師(ヤダチ)と呼ばれる雨乞い師がおり、盆に牛の結石(鮓荅(さとう)と呼ばれる)と水を入れ、呪文を唱えながら雨を降らせたという。
古代ローマでは竈(かまど)の神ウェスタに使える巫女たちが5月7日以降の満月の夜に、テヴェレ川に24体の等身大の人形を投げ込む雨乞いの儀式を行っていた。ヨーロッパには今でもこれと似たような儀式を行っている地域がある。
インドのある地方では雲に扮した雨乞い師が地面に水を撒く。ロシアのドーパットでは村の聖なる樅の木に3人の雨乞い師がのぼり、薬缶や燃えさし、水で濡らした小枝を使って嵐を再現する。いずれもこうなってほしいという状況を再現してみせる儀式である。