因幡の白兎 世界の類話
島から戻る話
シベリア少数民族の民話に、アオサギによって孤島に運ばれてたキツネがアザラシに頭数を数えると言って一列に並ばせ、背を渡って戻る場面がある。キツネは渡った先で猟師の獲物となり、毛皮をはがされる。
小鹿の例
インドネシアに因幡の白兎と類型する話が見られるが、ウサギではなく、小鹿とされる。洪水のために川を渡れなくなった鼠鹿が鰐を騙して集め、背を踏み歩いて渡り、愚かな鰐をあざける。
袋を持った人間が動物を助け、あるいは動物に助けられる話
『古事記』において、倭建命(ヤマトタケルノミコト)が火に囲まれたときに叔母からもらった袋とネズミのおかげで難を逃れた話(草薙剣(くさなぎのつるぎ)の話として知られる)、大国主が袋を背負ってやってきてウサギを助ける話(稲羽の白兎)を想起させる。
西アフリカのサバンナ地帯の口承民話。草原でワニが火に囲まれ、困っていると、通行人が、ワニを袋に入れて背に担ぎ、湖まで運んでやる。袋からワニを出すと、ワニは「腹が空いているからお前を食べる」という。人間は、「助けてやったのだから、食べないでくれ」と頼む。そこで、ワニは、湖に水を飲みに来たロバたちに意見をきく。ロバたちは、我々は人間を助けて乗り物となったり荷物を運んだりするが、感謝されたことはないと言う。動物たちに責められ、窮地に立った人間を、唯一、ウサギが助けてくれる。知恵者のウサギが、「この袋は小さすぎる。人間は、本当にこの袋にワニを入れてここまで運んできたのか。もう一度袋に入ってみてくれないか」とワニにいう。そこで、再びワニが袋に入ると、ワニは人間に撲殺され、食用とされることになった。ワニの入った袋を背負った人間が村に帰ると、子が病に伏せっていた。助けるにはワニの血とウサギの肉が要る。ちょうどワニはウサギの知恵のおかげで袋に入れて持ちかえっている。あとはウサギだが、助けてくれたウサギがいる。
ウサギの尻尾が短い理由を説明する話
アフリカの民話では、湖を迂回するのを億劫がったウサギが親類の数を誇るワニを挑発し、その自慢が本当か数えると騙して渡るが、ワニに尻尾を食いちぎられてしまい、そのために現在のウサギには尻尾がないと説明される。ウサギの尻尾が短い理由を説明する話としては、中国の広西(こうせい)(瑶族。ヤオぞく)民間動物故事にも同じウサギとワニの話があるほか、漢族民間動物故事ではウサギとスッポンで語られる。