根の国 比定地
根の国のあった場所は言うまでもなく地下であるという主張もあるが、一方で古くから神話を現実的に解釈し、地上のどこかに当てる説が行われた。その場合、イザナミやスサノオと縁の深い出雲国に入口があるとする説がある。特に、夜見(よみ)という地名のある鳥取県米子市(よなごし)と、黄泉平坂の比定地のある島根県松江市の間の島根県安来市(やすぎし)には、古事記にも「出雲国と伯耆国の堺の比婆山」と記されたイザナミのものと伝えられる御神陵があることからこの出雲東部一帯が根の国とする説が安本美典(やすもと びてん)著『邪馬台国と出雲神話』では述べられている。
また、大国主が根の国へ行く前に「木の国」へ行ったとの記述が神話にあることから、紀伊国、特にスサノオとの縁が深い熊野であるとする説もある。『日本書紀』の一書にイザナミが熊野に葬られたとの記述もあるように、熊野もまた古来より他界信仰の霊地であった。ただし、出雲説を支持する立場からは、「根」からの連想で「木」を持ち出しただけであるとする反論もある。