八神殿 祭神
冒頭の神産巣日神(かみむすびのかみ)・高御産巣日神(たかみむすびのかみ)・玉積産日神(たまつめむすびのかみ)・生産日神(いくむすびのかみ)・足産日神(たるむすびのかみ)の5神は、いわゆる「ムスビの神」として霊魂に関わる神々で、特に神産日神・高御産日神は造化三神(ぞうかのさんじん)のうちの2神である。次の大宮売神(おおみやのめのかみ)は、宮殿の人格化とも内侍(ないし。女官)の神格化ともいわれ、君臣の上下を取り持つ神とされる。そして御食津神は食物を司る神、事代主神は言葉を司る神とされる(一般に出雲系の事代主神とは異なると見られる)。
また『古語拾遺』によると、初代神武天皇の時に皇天二祖(天照大神・高皇産霊神)の詔のままに神籬(ひもろぎ)を建て、高皇産霊・神皇産霊・魂留産霊・生産霊・足産霊・大宮売神・事代主神・御膳神を奉斎したといい、その祭祀はこれに始まるとしている。
なお、祭神8神は天皇に直接関わる重要な神々であるが、そのうちに皇祖神(こうそしん)である天照大神が含まれていないことも特徴の1つである。古代に天照大神が宮中に祀られたことはなく、『日本書紀』の記す伝承では天照大神は崇神天皇(第10代)の時に宮廷外に出されたとしている(現在の伊勢神宮)。通説では、実際に天照大神が朝廷の最高神に位置づけられるのは7世紀後半以降であり、それ以前の最高神は高皇産霊尊(高御産日神)であったとされる。このことから、7世紀末頃に高皇産霊尊は宮中に、天照大神は伊勢に住み分けたとする説もある。