クシナダヒメ 神話での記述
高天原を追放されて出雲に降り立ったスサノオは、ヤマタノオロチという怪物に毎年娘を食われているアシナヅチ・テナヅチの夫婦と、その娘のクシナダヒメに出会った。彼らの話によると、もうじき最後に残った末娘のクシナダヒメも食われてしまう時期なのだという。哀れに思うと同時に、美しいクシナダヒメが愛しくなったスサノオは、クシナダヒメとの結婚を条件にヤマタノオロチの退治を申し出た。スサノオの素性を知らないアシナヅチとテナヅチは訝しむが、彼がアマテラスの弟と知ると喜んでこれを承諾し、クシナダヒメをスサノオに差し出した。
スサノオとの結婚が決まると、クシナダヒメはすぐにスサノオの神通力によって変形させられ、小さな櫛に変えられた。そして櫛としてスサノオの髪に挿しこまれ、ヤマタノオロチ退治が終わるまでその状態である。ヤマタノオロチ退治の準備はスサノオの指示で、アシナヅチとテナヅチが行った。
クシナダヒメを頭に挿したスサノオは、見事ヤマタノオロチを退治する。 ヤマタノオロチを退治した後、スサノオはクシナダヒメと共に住む場所を探して、須賀(すが、すか)の地に宮殿を建てた。
その後
櫛に変えられたクシナダヒメがその後どうなったのかは原文では明記されておらず、元の姿に戻ったという直接的な描写もない。しかし、せっかく命を救われたのに無生物である櫛のままだったとは考えにくく、スサノオがクシナダヒメと共に住む宮殿を建てていること、その直後に
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠に 八重垣作る その八重垣を」
(やくもたつ いづもやえがき つまごみに やへがきつくる そのやへがきを)
と詠んでいること等から、ヤマタノオロチが退治された後で無事に元の美しい娘の姿に戻してもらい、約束通りスサノオの妻になったとする解釈が一般的である。