稲荷神 祭神
稲荷神(稲荷大神、稲荷大明神)は、山城国稲荷山(いなりやま。伊奈利山)、すなわち現在の伏見稲荷大社に鎮座する神で、伏見稲荷大社から勧請されて全国の稲荷神社などで祀られる食物神・農業神・殖産興業神・商業神・屋敷神である。また神仏習合思想においては仏教における荼枳尼天(だきにてん)と同一視され、豊川稲荷(とよかわいなり。妙厳寺(みょうごんじ))を代表とする仏教寺院でも祀られる。
神道の稲荷神社では『古事記』、『日本書紀』などの日本神話に記載される宇迦之御魂神(うかのみたま、倉稲魂命とも書く)、豊宇気毘売命(とようけびめ)、保食神(うけもち)、大宣都比売神(おおげつひめ)、若宇迦売神(わかうかめ)、御饌津神(みけつ)などの穀物・食物の神を主な祭神とする。
総本宮である伏見稲荷大社では、主祭神である宇迦之御魂大神を中央の下社、佐田彦大神(サタヒコ)を中社、大宮能売大神(オオミヤノメ)を上社に据え、明応8年(1499年)に本殿に合祀された左右の摂社、田中大神(たなかのおおかみ)・四大神(しのおおかみ)とともに五柱の神を一宇相殿(一つの社殿に合祀する形)に祀り、これら五柱の祭神は稲荷大神の広大な神徳の神名化としている。稲荷社によっては祭祀する祭神が異なり、例えば、
· 生玉稲荷神社(いくたまいなりじんじゃ。名古屋市守山区)
- 倉稲魂神(ウカノミタマ)、
大己貴命(オオナムチ。大国主)、
保食神(うけもちのかみ)、
大宮能姫神(オオミヤノメノカミ)、
太田神(おおたのかみ)
· 笠間稲荷神社(かさまいなりじんじゃ。茨城県笠間市)
- 宇迦之御魂神(ウカノミタマ)
· 豊受稲荷神社(千葉県柏市)
- 主祭神に稲蒼魂命(ウカノミタマ)、
配神に大己貴命(オオナムチ)、
大田命(おおたのみこと。太田神)、
大宮姫命(おおみやひめのみこと。大宮能姫神)、
保食命(うけもち)
· 祐徳稲荷神社(ゆうとくいなりじんじゃ。佐賀県鹿島市)
- 倉稲魂大神(ウカノミタマ)、
大宮売大神(オオミヤノメノカミ)、
猿田彦大神(サルタヒコ)
· 竹駒神社(たけこまじんじゃ。宮城県)
- 倉稲魂神(ウカノミタマ)、
保食神(うけもち)、
稚産霊神(わくむすびのかみ)
また豊受稲荷神社では、大己貴命を佐田彦大神、大宮姫命を田中大神、保食命を四大神に、祐徳稲荷神社では大宮売大神をアメノウズメノミコトに当てている。