イスラーム世界における廟
イスラーム世界における廟は多くの場合、葬られている人物の墓に付属する施設である。聖地マッカ(メッカ)への巡礼にあわせて預言者のモスクを訪れたり、シーア派の信徒がイラクにあるイマーム達の墓廟に参詣するなど、墓廟は多くのムスリムから崇敬を集める存在である。
信仰に関わるもの
サウジアラビア・マディーナにあるムハンマドの墓廟である預言者のモスクや、イラク・ナジャフにあるアリーの墓廟などが知られる。墓所とされる場所が複数ある場合は廟も複数存在し、アリーの墓廟と称するものはナジャフのほかにも、アフガニスタン・マザーリシャリーフなどにも存在している。
スーフィー達を祀る聖者廟も各地に存在する。スーフィズム(イスラーム神秘主義)では聖者崇拝が盛んで、墓廟への参詣によってさまざまな「ご利益」にあずかることを期待する信徒も多い。小規模な墓廟も多いが、世界遺産であるホージャ・アフマド・ヤサヴィー廟やコンヤにあるルーミーの廟といった大規模なものも存在する。
もっとも、イスラームでは偶像崇拝を否定しているため、聖者崇拝や墓廟の聖地視を信仰からの逸脱と見なす厳格な考えも存在しており、過去にはワッハーブ派の第一次サウード王国が各地の聖者廟を破壊するという出来事も起こっている。
王侯や学者などの廟
王侯や学者などの廟も存在する。ダマスカスのサラーフッディーンの廟や、アブー・ハニーファやシャーフィイーといった著名な法学者の廟、ムガル帝国における各種墓廟建築などがある。
ムガル帝国の墓廟建築には美しいものが多く、第2代皇帝フマーユーンの墓廟であるフマーユーン廟や、第5代皇帝シャー・ジャハーンが皇妃ムムターズ・ムハルの墓廟として建設したタージ・マハルは、イスラーム建築の至宝とも言われている。