鯰絵の前身 大津絵
鯰絵の前身と言える絵画の一つに大津絵(おおつえ)がある。大津絵は大津宿を中心に描かれた民俗絵画で、本来の仏画とともに多彩な世俗画を特徴としている。
「大津絵十種」と呼ばれた代表的な画題の一つとして、室町時代の画僧 如拙(じょせつ)により描かれた国宝「瓢鮎図」(ひょうねんず:ここでの鮎は鯰の古字)を茶化した「瓢箪鯰」(ひょうたんなまず)がある。つるつるの瓢箪(ひょうたん)でぬめるナマズを押さえつけるにはどうするかという禅問答をモチーフとしたのが本来の瓢鮎図で、大津絵では猿が瓢箪で鯰を押さえようとする図が滑稽に描かれる。地震後の鯰絵にも、この瓢箪鯰に加え、藤娘(ふじむすめ)など大津絵のテーマをパロディ化したものが種々認められる。