天孫降臨 火中出産 日本書紀 ④
第九段一書(五)では、 天孫(瓊瓊杵尊)は大山祇神の娘の吾田鹿葦津姫(あたかあしつひめ)を娶り、一夜にして身籠る。そして四子(よはしらのみこ)を生む。そこで吾田鹿葦津姫は子を抱き進み来て、「天神の御子を、寧(いずくん)ぞ私に養(ひだ)しべけんや。故、状(かたち)を告げて聞こえ知らしむ」と言った。この時、天孫はその子たちを嘲笑い、「あなにや、我が皇子は、聞き喜くも生(あ)れたるかな」と言った、とある。
そこで吾田鹿葦津姫が怒って、「何すれぞ妾を嘲うや」と言うと、天孫は、「心に疑(うたがわ)し。故に嘲う。何となればまた天神の子といえども、あによく一夜の間に人をして有身(はら)ませんや。固(まこと)我が子には非(あら)じ」と言った。これを聞いて吾田鹿葦津姫はますます恨み、戸無き室を作りその中に入り、誓いて「妾が妊(はら)める所、若(も)し天神(あまつかみ)の御子に非(あら)ずば必ず亡びなん。 是(これ)若(も)し天神(あまつかみ)の御子ならば害(そこな)う所無けん」と言う。そして火を放ち小屋を焼いた、とある。 以下がその四柱の御子の登場順、名と名乗りの台詞である。
· その火の初め明かる時、勇ましく進み出て:
火明命(ほのあかり):
「吾は是(これ)天神(あまつかみ)の子(みこ)、名は火明命。吾が父(かぞ)は何處(いずこ)に坐(いま)すや。」
· 火の盛(さかり)の時、勇ましく進み出て:
火進命(ほのすすみ):
「吾は是(これ)天神(あまつかみ)の子(みこ)、名は火進命。吾が父(かぞ)及び兄(いろね)何處(いずこ)に在りや。」
· 火炎(ほのお)衰(しめ)る時、勇ましく進み出て:
火折尊(ほのおり):
「吾は是(これ)天神(あまつかみ)の子(みこ)、名は火折尊(ほのおりのみこと)。吾が父(かぞ)及び兄(いろね)等、何處(いずこ)に在りや。」
· 火熱(ほとほり)を避りし時、勇ましく進み出て:
彦火火出見尊:
「吾は是(これ)天神(あまつかみ)の子(みこ)、名は彦火火出見尊。吾が父(かぞ)及び兄(いろね)等、何處(いずこ)に在りや。」