天孫降臨 日本書紀 

 


以下が天鈿女命と衢神(ちまたのかみ)猿田彦の問答である。



· 天鈿女命:胸をあらわにし、衣の紐を臍(へそ)の下まで押し下げあざ笑い、衢神に向かい立つ。→ 衢神猿田彦:「天鈿女、汝の為す(そんなことをする)は何の故ぞ」と尋ねた。

 


· 天鈿女命:「天照大神の御子(皇孫)が進む道路(みち)に如此(かく)居(いま)す者有るは誰ぞ。敢て問う」→ 衢神猿田彦:「天照大神の御子、今、まさに降り行くと聞く。故に迎え奉りて相い待つ。我が名は猿田彦大神ぞ」

 


· 天鈿女命:「汝、我を将(い)て先(さきだち)て行くか、それとも、我、汝に先て行くか」→ 衢神猿田彦:「我、先て啓(みちひらき)て行かん」

 


· 天鈿女命:「汝は何処(いずこ)に到るや。皇孫は何処に到るや」→ 衢神猿田彦:「天神の御子、まさに筑紫の日向(ひむか)の高千穗(たかちほ)の触之峯(くぢふるのたけ)に到るべし。我は伊勢の狭長田(さなだ)の五十鈴(いすず)の川上に到るべし」更に続け、「我の素性を明らかし者は汝なり。故、汝、我を送りて致るべし」




その後、天鈿女命還り詣(いた)りて状(かたち)報(かえりこともう)す、とある。そこで皇孫は天磐座(あめのいわくら)を脱離ち、天八重雲を押し分けて、稜威の道別に道別て、天降(あまくだ)る。果して先の期(ちぎり)の如く、皇孫は筑紫の日向の高千穗の触之峯(たかちほのくじふるのたけ)に到る。



衢神猿田彦は伊勢の狭長田の五十鈴の川上に辿り着き、天鈿女命は衢神猿田彦の乞う所の随に送り届けた。そこで皇孫は天鈿女命に、「汝は素性を明らかにした神の名をもって姓氏とせよ」と勅し、これによって猿女君の名を授かった、とある。



前半は天照大神が取り仕切る天壌無窮の神勅であり、後半は天鈿女命と猿田彦の問答がメインとなる。