神産み 古事記 黄泉の国 ②
イザナミはさらに、8柱の雷神と黄泉軍(よもついくさ)にイザナギを追わせた。
イザナギは十拳剣で振り払いながら逃げ、ようやく黄泉の国と地上の境である黄泉比良坂(よもつひらさか)の坂本に着いたとき、坂本にあった桃の実を3つ投げたところ、追ってきた黄泉の国の悪霊たちは逃げ帰っていった。
ここでイザナギは、桃に「人々が困っているときに助けてくれ」と言って、意富加牟豆美命(おほかむずみのみこと)と名づけた。
最後にイザナミ本人が追いかけてきたので、イザナギは千人がかりでなければと動かないような大岩で黄泉比良坂をふさぎ、悪霊が出ないようにした。その岩をはさんで対面してこの夫婦は別れることとなる。
このときイザナミは、「私はこれから毎日、一日に千人ずつ殺そう」と言い、これに対しイザナギは、「それなら私は人間が決して滅びないよう、一日に千五百人生ませよう」と言った。これは人間の生死の由来を表している。
このときから、イザナミを黄泉津大神(よもつおほかみ)・道敷大神(ちしきのおほかみ)とも呼び、黄泉比良坂をふさいだ大岩を道返之大神(ちかへしのおほかみ)・黄泉戸大神(よみとのおほかみ)ともいう。なお、古事記では、黄泉比良坂は出雲国の伊賦夜坂(いふやのさか;現在の島根県松江市の旧東出雲町地区)としている。