依り代 言葉
祭礼で使われる梵天(ボンデン、ホデ)と呼ばれる「床屋の耳掻きの、丸く切りそろえたる」物や、だいがく、などは神霊を迎える側からの呼称である招代(おきしろ)と呼ばれる。
折口は、1915年4月、雑誌『郷土研究』へ掲載した論文『髯籠(ひげかご)の話』の中で、柳田國男の柄杓(ひしゃく)、瓢(ひさご)、杓子(しゃくし)に関する膨大な資料等を参照し、「採り物」と呼ばれる柄杓状の呪具が、マナを招き、「えぶる(集める)」物を指すものの、古神道や日本の民俗信仰で用いられる、神降ろしの印を表す言葉がない、という問題から、依り代という言葉を、招代・標山(しめやま)とともに初めて用いた(なお、柳田國男は依り代という語を二度しか用いなかった)。
ただし、現在の神社神道では、森羅万象が依り代になりうるとは必ずしも考えていないため、いわゆる依り代を指す表現は御霊代(みたましろ)・巫(かんなぎ)であり、神奈備(かむなび)等の神域や、時代考証、伝統により由来のはっきりした、上代(じょうだい。桓武天皇の時代)以前から神体とされるものは、かみしろ(神代・上代)とよばれる。