付喪神 絵画作品


付喪神が描かれている『付喪神絵巻』では、物語の冒頭に「陰陽雑記に云ふ。 器物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑かす、これを付喪神と号すと云へり」とあり、道具が変化することを「付喪神」としている(ただし『陰陽雑記』という書物の実在は確認されていない)。本文中、それらの姿は「男女老少の姿」(人間のかたち)「魑魅悪鬼の相」(鬼のかたち)「狐狼野干(ころうやかん)の形」(動物のかたち)などをとっていると表現されている。また、変化したのちの姿は「妖物」などと表記されている。



『付喪神絵巻』よりも先行していると見られる絵巻物にも、道具がモチーフとなっている妖怪を絵画で確認することは出来、『土蜘蛛草紙(つちぐもぞうし)には、五徳(ごとく)が頭についているものや、手杵(てぎね)に蛇の体と人の腕が2本くっついたものや、角盥(つのだらい)に歯が生えそのまま顔になっているものなどが描かれている。また、角盥がモチーフとなったとおぼしい顔は『融通念仏縁起』や『不動利益縁起絵巻』に描かれている疫神(えきじん。疫病神)にほぼ同様のかたちのものが描かれている。ただし、いずれも道具だけではなく、動物や鬼のかたちをしたものと混成している。これは『付喪神絵巻』や『百鬼夜行絵巻』などにも見られる特徴である。





古い現存作品には室町時代のものも確認されている『百鬼夜行絵巻(ひゃっきやぎょう えまき)は、道具の妖怪と見られるものが多く描かれている。現在ではこれら道具の妖怪たちは付喪神を描いたものであるとも考えられており、また、もともと『百鬼夜行絵巻』に描かれている行列の様子は『付喪神絵巻』に見られる妖物たち(年を経た古物)の祭礼行列の箇所を描いたものではないかとも考察されている。