宮中祭祀 現代での位置づけ
日本国憲法やその下の法律に宮中祭祀についての明文の規定はなく、現在の宮中祭祀も皇室祭祀令に基づいて行われている。また、これに係る予算も皇室の内廷費(ないていひ)によって処理されている。このため、多くの憲法学者が、戦後の宮中祭祀を「天皇が私的に執り行う儀式」と解釈するようになった。
宮内庁の公式HPでは、宮中祭祀を「宮中のご公務など」の項で説明している。
また、内閣総理大臣はじめ三権の長が、大祭を中心に一部の祭祀に陪席していることが確認されている。佐藤栄作は首相在任期間中、春季皇霊祭・春季神殿祭、秋季皇霊祭・秋季神殿祭、新嘗祭にほとんど出席しており、NHKスペシャル『象徴天皇 素顔の記録』(2009年4月10日放送、天皇・皇后成婚50周年の記念番組)では、当時の麻生太郎首相ほか三権の長が、春季皇霊祭・春季神殿祭に出席している映像が放映された。
制度としての宮中祭祀が確立して以降の天皇では明治天皇や大正天皇はあまり熱心ではなく、侍従らが代拝するのが主であった。一方で、貞明(ていめい)皇后・昭和天皇・香淳(こうじゅん)天皇は非常に熱心であった。
在位後期に侍従長であった入江相政(いりえ すけまさ)は、昭和40年代から50年代に昭和天皇の高齢を理由とした祭祀の簡略化を推進したことがその日記から伺えるが、昭和天皇は1986年(昭和61年)まで新嘗祭の親祭を続けた。
今上天皇・皇后も祭祀にはきわめて熱心であり、諒闇(りょうあん。服喪中)や病気を除くとほとんどの宮中祭祀に代拝を立てず御自ら出席している。
祭祀に関しては、事前の潔斎と平安装束を着用する事に加え、長時間の正座が必要であり、生前の昭和天皇は祭祀が近づくと、正座してテレビを視聴するなど、意識的に長時間正座することを心がけていたという。今上天皇も新嘗祭の時節が近づくと、昭和天皇と同様に正座の練習をするとのことである。
在位20年を経た2009年(平成21年)以降は、高齢である今上天皇の健康への配慮、負担軽減のため、祭祀の簡略化や調整が計画、実施されている。