神社建築(本殿)の特徴


神社建築(本殿)の特徴として以下の点が指摘されている。


1 屋根に妻(つま)を持つこと


2 床を高く張ること


3 瓦を用いないこと


4 土壁を用いないこと


5 装飾の質素なこと



まず「屋根に妻を持つこと」についてだが、これは神社建築の屋根はほとんどが切妻造(きりづまづくり)で、一部に入母屋造(いりもやづくり)が見られる。入母屋造は仏教建築に由来する様式であるが、同じ仏教建築の様式であるが妻のない寄棟造(よせむねづくり)宝形造(ほうぎょうづくり)は採用されていない。このことは、仏教建築からの一方的な影響ではなく、神社建築としての価値観に基づいて、神社側が主体的に入母屋造を神社建築に採用したことを示している。



妻の神社建築における意義ははっきりしないが、信仰上の重要な要素であったことは間違いないと思われる。例えば、伊勢神宮正殿において妻の部分の金具が特別視され、式年遷宮(しきねんせんぐう)の際に妻を装着する儀礼が秘伝とされたことや、流造の社殿を横にいくつも連結した社殿において、ひとつの社殿ごとに正面に千鳥破風(ちどりはふ。妻)が設けられて、ひとつひとつの社殿が区別されていることからもわかる。



床を高く張ることについては、本来、土間を基本とする寺院建築と対照的である(奈良時代の仏堂や禅宗様の建物は中国の建築と同様に床を張らない)。



瓦を用いないことについては、明らかに瓦葺きの仏教建築との差異を意識し、もしくは仏教建築を忌避したものであるといえる。神社の屋根は基本的に植物材で葺くが(桧皮葺(ひわだぶき)杮葺(こけらぶき))、近世になると銅板葺(銅葺、銅版葺)も用いられるようになった。ただし例外的に、本殿に瓦葺を用いる場合もある(たとえば、沖縄の神社は伝統的な赤瓦を用いる)。土壁を用いないことについても同様である。



装飾が質素なことは、上古の日本建築の様式を固定化したためといえる。日本固有の神の住まいであるので、仏教とは異なることを意識し、日本に伝統的な建築の意匠を取り入れている。



※以上のことは、あくまで概論であり、全ての神社建築に当てはまるわけではなく、時代によっても変遷がある。