頭襟(ときん)


頭襟(ときん)は、山伏がかぶる帽子である。頭巾兜巾と書かれることもあるが、頭巾(ずきん)とは形状も用途も全く異なるので要注意。



『役行者本記』によると、役小角701年に大赦により、配流先の伊豆大島から大和国に戻った際、ねぎらいとして文武(もんむ)天皇から黒色の冠を下賜されたことが頭襟の由来であるとされる。



黒漆で塗り固めたで作った、丸く小さい形式のもの(宝珠形)が一般的で、大日如来五智(ごち)の宝冠を表している。十二因縁にちなんで12のひだを持ち、上から見ると放射状に12等分されているように縫い目がある。かぶるというよりはの上に載せるように着用し、の下で結んでとめる。山中で瘴気(しょうき)を防ぐ効果があるといわれる。



他に、1尺8寸(約54センチメートル)の黒い布を巻く小頭襟、5尺(約1.5メートル)の布を巻く長頭襟などのバリエーションがある。



なお、元々の頭襟は頭にすっぽりとかぶせる大型のものであったが、江戸時代以降に小型化が進み、現在の形になった。