天目授与本尊 弘安5年4月御図顕の本尊
当本尊は日蓮大聖人最晩年に御図顕された御本尊の一つということができる。立正安国会の御本尊目録では120番である。大きさは縦3尺0寸7分(93.0cm)、幅1尺6寸8分(50.9cm)で、3枚の料紙をつなぎあわせた上に図顕されている。山中喜八(やまなか きはち)は御本尊集目録において「年月日の右下に、異筆で『禅』とあり、これに続く何字かを削損した形跡を存する。『卯月』の下に『二』を加えたのも、聖筆とは拝し難い。当御本尊の授与書きに『沙門天目に之を受与す』とあり、京都妙満寺宝蔵の文永11年6月の御本尊(本集11)もまた『沙門天目に之を受与す』とあるのは異とすべく、古来謀筆の論議の生じた一因であるが、当御本尊の授与書は聖筆、妙満寺のそれは他筆と拝するのが至当のようである。」としている。しかし山中喜八が指摘する異筆の「禅」の文字は、写真で見る限り「禅」の文字の下がすでに削損されているようであり、「禅」に続く異筆文字だけが削損されているというようには見えない。授与書きそのものが削損されていると見るのが自然と思われる。また、当御本尊の「沙門天目に之を受与す」との授与書きも筆致が日蓮大聖人のものとは異なるように見える。従って当本尊を天目授与とすることにも疑点がある。2014年現在は京都本隆寺(ほんりゅうじ)に所蔵される。