佐渡始顕本尊 『経王殿御返事』との関連
当御書は文永10年8月15日、四条氏に宛てて出された書状とされるが、御真蹟は現存せず、録外御書に初めて収録された。文中、曼荼羅本尊に言及する言葉があるが、中でも「十羅刹女の中にも皐諦女(こうだいにょ)の守護ふかゝるべきなり。」という言葉に注目される。日蓮大聖人御図顕の曼荼羅本尊の中には、十羅刹女の個別名が列記されているものがあるが、十羅刹を列記する例は大幅の大曼荼羅本尊にしか見られない。文永10年8月15日の『経王殿御返事』に、十羅刹の中の「皐諦(こうだい)」の名前を肯えて挙げられているのは、この時期、十羅刹の名前を列記した大曼荼羅本尊があったことの傍証であり、それは文永10年7月8日の佐渡始顕本尊でしかありえない。