社寺参詣曼荼羅の空間構成 位相を分割する植物


参詣曼荼羅には、杉、松、桜、紅葉、照葉樹の植物表現がしばしば見出されるが、これらは現実の植生というよりは聖俗の空間を分節化する象徴的な記号であると見ることができる。中世においては、『天狗草紙』(てんぐぞうし)における一遍踊り念仏の情景にも見られるように、浄土の表現として最も相応しいのは花が降る光景であった。こうした散り振る花の描写は、参詣曼荼羅が製作され受容された時代の人々にとって浄土を想起させる描写だったのであり、単なる修飾などではなく描かれているのがまさに霊場であることを示している。