梵鐘(ぼんしょう) 


梵鐘の主な役割は本来は法要など仏事の予鈴として撞(つ)く仏教の重要な役割を果たす。朝夕の時報(暁鐘 - ぎょうしょう、昏鐘 - こんしょう)にも用いられる。ただし、梵鐘は単に時報として撞かれたものではなく、その響きを聴く者は一切の苦から逃れ、悟りに至る功徳があるとされる。こうした梵鐘の功徳については多くの鐘の銘に記されている。



青銅製が多いが、小型のものにはまれに製もある。小型のもの(一説には直径1尺7寸以下)は半鐘はんしょう。喚鐘(かんしょう)、殿鐘(でんしょう))といい、高い音で、用途も仏事以外に火事などの警報目的でも使われる。



響きをよくするために鋳造の際、指輪)を入れることがあるといわれ、江戸時

には小判を鋳込んだ例もある。雅楽と鐘の関係を記す文献もある。



日本では第二次世界大戦時に出された金属類回収令により、文化財に指定されているものなど一部の例外を除き、数多くの梵鐘が供出され、鋳潰された。これにより、近代や近世以前に鋳造された鐘の多くが溶解され、日本の鐘の9割以上が第二次世界大戦時に失われたという。



最近では特に都市部で梵鐘の音を騒音と捉えた人から寺や警察に梵鐘を撞くことをやめるよう苦情が来ることが増え、撞き手がいない寺が増えていることもあって、除夜の鐘も含めて梵鐘を撞く寺が減ってきている。



撞き手に代わる策として、奈良県の上田技研産業株式会社が開発した自動撞木を導入する寺が増えている。この装置は、撞木の中にモーターとバネが組み込まれており、鐘を撞く時間が近付くとモーターがバネを圧縮し、解放した時に発生する力を利用して、押し出す形で撞くようにできている。ただし、これだけでは撞木が揺れ動いたままなので、バネの圧縮と同時に上部に取り付けられたアームが下がり、先端のローラーで撞木を上から押さえ付けて、鐘を撞いた後の動きを抑制し、すぐにまた鐘が撞けるようにしている。もちろん、これまで通りに撞き紐で撞くことも可能である。