チベット仏教 教義 基盤となる顕教の教え


どの宗派においても、一切有情(うじょう。衆生)が本来持っている仏性を「基」とし、智慧ちえ。空性(くうしょう)を正しく理解すること)と方便ほうべん。信解・菩提心・大慈悲などの実践)の二側面を重視し、有情が大乗菩薩となり六波羅蜜を「道」として五道十地(ごどうじゅうじ)の階梯を進み、「果」として最終的に仏陀の境地を達成することを説く。哲学的には龍樹の説いた中観(ちゅうがん)派の見解を採用しており、僧院教育の現場においては、存在・認識についての教学・論争による論理的思考能力と正確な概念知の獲得を重視している。その思想の骨格となる重要な論書としては、シャーンティデーヴァの著した『入菩薩行論』 (Bodhisattvacaryāvatāra) 、マイトレーヤの著した『究竟一乗宝性論』(Uttaratantra Śāstra)『現観荘厳論』(Abhisamayālamkāra)などがあるほか、アティーシャらが説いたロジョン(blo sbyong、和訳:心の修行)の教えが重視され、全宗派で修習されている。