秘密集会タントラ 内容 概要


『秘密集会タントラ』は、文字通り、一切の如来・菩薩が会する場で「秘密にされてきた真理の集成」が説かれるという体裁を採っている。なお、チベットではこの経典の内容を象徴し、具現化したと見られる密集金剛グヒヤサマージャ)という尊挌(歓喜仏)が、本尊として仏像や立体曼荼羅タンカ(仏画)等の仏教美術の題材とされることもあるが、この経典自体には、そのような仏は現れない。



上述したように、『秘密集会タントラ』は、(『金剛頂経』を引き継ぐ原初的なテキストに基づく、あるいはそうした原初的な集団から派生した)様々な類似グループの説・行法の寄せ集めであり、重複や齟齬、順序の混乱が散見され、丁寧に編纂されたとは言い難い。しかし、内容的に全くバラバラというわけではなく、一応は一定のまとまりが維持されている。



第一分から第十二分の「前半部」では、比較的短い文で、観法・儀則の概要が述べられる。それに対して、第十三分から第十七分の「後半部」では、文量が増え、記述が詳細になる一方、儀軌類にありがちな呪術に関する記述が頻出するようになる。そして、最後の第十八分(続タントラ)に至って、それらの乱雑な内容を補足すべく、疑問点の解消や解説の記述に徹するのである。