サキャ派 教義


初期のサキャ派の教義はサチェン (1092-1158) の『密教概論』にまとめられている。



サチェンの師であるドクミは、サキャ派で最高の教えとされている『ラムデ』(lam 'bras、道果。どうか)の法体系を授けた。それは、「喜金剛タントラ」(ヘーヴァジュラ)に基づき大成就者(マハーシッダ・ヴィルーパ(Virupa/Birupaとも)にもたらされたものである。「道果」とは簡単に言えば「悟りを目指して修行するその道程において、すでに成仏の証果が得られている」という説である。



また、サチェンは異教徒が改宗しやすいように、密教の法身に示された4つのタントラ(教義)がヒンドゥー教とも関係していると説明した。すなわち、ヒンドゥー教の神ブラフマーを自性、シヴァを受用、ヴィシュヌを変化と考え、それぞれを信奉する者に無上瑜伽タントラ、行タントラ、所作タントラを説き、三神を等しく信奉するものに瑜伽タントラを説いた。(※瑜伽ヨーガ。)



サチェンの後を継いだソナムツェモ (1142-1182) はさらに説明を加え、「インド神を奉ずる者は外道であり、三宝に帰依していないだけでなく、無我方便の知見もないため地獄に落ちてしまう。それゆえにこの4種のタントラを説く」としている。また、4タントラは顕教の説一切有部(せついっさいうぶ)経量部(きょうりょうぶ)唯識部(ゆいしきぶ)中観部(ちゅうがんぶ)とも関連し、人の執着を満足させる4種の方法にも対応すると説明している。ソナムツェモのこの説に対してツォンカパは反論を述べている。




サキャ派の傍系からシャル派を立てたプトゥン (1290-1364) が出た。彼は重要な学者・著述家で、チベット史上でも有名な歴史家である。また「チベットの六つの飾り」として、次の人物が知られる。


· ヤクトク・サンゲー・ペル


· ロントゥン・シェチャ・クンリク (1367-1449)


· ゴルチェン・クンガー・サンポ


· ゾンパ・クンガー・ナムゲル


· コランパ・ソナム・センゲ (1429-1489)


· シャーキャ・チョクデン (Shakya Chogden) (1428-1507)