サキャ派 歴史 サキャ派が出来るまで
サキャ派は中央チベットのツァンに栄えたクン族(コンとも書かれる)による宗派である。クン氏の伝承によると、クン氏の祖先は神の子であった。吐蕃(とばん)時代のティソン・デツェン王の頃から歴史に登場し、コン・ペルポチェは大臣を務めている。また、インドからの渡来僧シャーンタラクシタに得度を受けたルイ・ワンポはチベット最初期の僧の1人とされる。
後にサキャ派の開祖となるコンチョク・ギェルポ (1034 - 1102) は、在家の行者であった。コンチョク・ギェルポは、当初はチベット古来からの仏教であるニンマ派の教えを受けたが、規律の緩みはじめていたニンマ派の教えに飽き足らず、兄シェーラプ・ツルティムに命じられてドクミ ('brog mi) の門下となった。ドクミはインドから来た高僧ガヤダラの弟子で、インドのヴィクラマシラー寺で数年学んだ学者・翻訳家である。ドクミはサンスクリット文字の原典をチベット語に翻訳した『カーラチャクラ(時輪(じりん))タントラ』をコンチョ・ギェルポに授け、これがサキャ派の教義の基盤になった。
コンチョク・ギェルポは1073年、チベット南部のシガツェにあるポンボ山 (dPon po ri) ポンポリの白い土地を吉祥と見て寺を建てた。そのため、コンチョク・ギェルポの始めた教義は「白い土地」を意味する「サキャ」と名づけられた。また、この寺が後のサキャ寺である。
サキャ寺院を開いたのはコンチョク・ギェルポであるが、サキャ派の初代座主はコンチョ・ギェルポの兄シェーラプ・ツルティムとされ、コンチョク・ギェルポは2代目座主と呼ばれている。