観音菩薩 信仰・位置づけ


観音経(かんのんぎょう)などに基づいて広く信仰・礼拝の対象となっている。また、『般若心経』の冒頭に登場する菩薩でもあり、般若の智慧の象徴ともなっている。浄土教では『観無量寿経』の説くところにより阿弥陀如来の脇侍として勢至菩薩と共に安置されることも多い。観音菩薩は大慈大悲を本誓とする。中国では六朝時代から霊験記(れいげんき。観世音応験記(かんぜおんおうげんき)が遺され、日本では飛鳥時代から造像例があり、現世利益と結びつけられて、時代・地域を問わず広く信仰されている。



観音の在す住処・浄土は、ポータラカ(Potalaka補陀落(ふだらく))といい、『華厳経』には、南インドの摩頼矩咤国の補怛落迦であると説かれる。



偽経『観世音菩薩往生浄土本縁経』によると、過去世において長邦(ちょうな)というバラモンの子・早離(そうり)であったとされる。彼には速離(そくり)という兄弟がおり、のちの勢至菩薩だという。早離と速離は騙されて無人島に捨てられ、餓死したが、早離は餓死する寸前に「生まれ変わったら自分たちのように苦しんでいる人たちを救いたい」と誓願を立てたため、観音菩薩になったという。なお、父の長邦は未来に釈迦として生まれ変わった。




チベット仏教における位置づけ

チベット仏教では、チベットの国土に住む衆生は「観音菩薩の所化」と位置づけられ、チベット仏教の四大宗派に数えられるゲルク派の高位の化身ラマで、民間の信仰を集めているのダライ・ラマは、観音菩薩(千手千眼十一面観音)の化身とされている。居城であるラサポタラ宮の名は、観音の浄土である、ポータラカ(Potalaka、補陀落)に因む。チベットでは、観音菩薩はチェンレジー(spyan ras gzigs)として知られるが、これは「観自在」を意味する「spyan ras gzigs dbang phyug」を省略したものである。