大日如来(だいにちにょらい)


大日如来(だいにちにょらい)、梵名 マハー・ヴァイローチャナ(महावैरोचन [mahāvairocana])は、虚空にあまねく存在するという真言密教の教主。「万物の慈母」、「万物を総該した無限宇宙」とされる汎神論的な仏。声字実相を突き詰めると、ての宇宙は大日如来たる阿字(あじ)に集約され、阿字の一字から全てが流出しているという。神仏習合の解釈では天照大神あまてらすおおみかみ。大日孁貴(おおひるめのむちのかみ))と同一視もされる。

無相法身と無二無別なり(姿・の無い永遠不滅真理そのものと不可分である)」という如来の一尊。摩訶毘盧遮那如来(まかびるしゃなにょらい)、大光明遍照(だいこうみょうへんじょう)とも呼ばれる。なお、宇宙とはあらゆる存在物包容する無限空間時間の広がり、および宇宙空間を指す。大日如来は、無限宇宙に周遍する点では超越者だが、万物と共に在る点では内在者である。全一者であり、万物を生成化育することで自己を現成し、如来の広大無辺な慈悲は万物の上に光被(こうひ。光や君徳などが広く行きわたること)してやまないとされる。三世さんぜ。過去現在未来前世現世来世)にわたって常に説法しているとも説かれる。

それ如来説法は必ず文字による。文字の所在は六塵(ろくじん)其のなり。

六塵の本は法仏の三密即ち是れなり。

(如来の説法は必ず文字によっている。文字のあるところは、六種(視覚聴覚嗅覚味覚触覚思考)の対象をその本体とする。この六種の対象の本質は、宇宙の真理としての身体言語意識の三つの神秘的な働きこそがそれである。)


空海(『声字実相義』(しょうじじっそうぎ)より)


身口意(しんくいごう)虚空に徧じ、如来の三密門金剛一乗甚深教を演說す。

(大日如来が身・口・意で起こす三つの業は虚空に遍在し、

三つの業の秘密において仏と平等の境地にひたる仏の教え演説する。)


— (『金剛頂経瑜伽修盧遮那三摩地法』より)